鳴く事をやめた蝉。花火の燃えクズ。球児達の汗をたっぷり吸い込んだ甲子園の砂
夏の終わりは、どこか物悲しいものです。
今回はそんな「夏の終わりの空気」を表現した看板を考えます。
夏嫌いやけど。
「素材を最大限に活かした看板」その3
■楽しいからこそ、後に残る物悲しさ
花火、海、プール、夏祭り、夏フェス。
不快な要素であるはずの「暑さ」を逆手に取って熱狂する「熱さ」に変換する事で、季節を体感しながら元気に楽しむイベントは夏の特徴である。
しかし、インパクトのある楽しさだからこそ、夏の終わりには燃え尽きるかの様な物悲しさが産まれる。
僕は夏が嫌いだが、皆が秋に向けての「侘しさ」のようなものは感じ取ることができる。
それほどに「夏の終わり」というものは一年の中でも特別な感情がにじみ出る時期なのだ。
今回の【素材を最大限に活かした看板】では、その「夏の終わりの物悲しさ」を表現しようと思う。
■散り行く儚さ
終わった後の虚無感とはなんなのか。
我々必死に考えました。
終わりの儚さ=散り行く儚さ
それを表現できる物は二つ。
「線香花火」
と
「蚊取り線香」
どちらも「線香」という名前がつく。
線香花火は名称であって線香ではないが、蚊取り線香は蚊の多い夏だけに嗅ぐ香り。8月のお盆には高い確率で杉線香の香りを嗅ぐ事になる。
「線香」は夏に関連づけやすいのである。
とりわけ「蚊取り線香」に関しては、それなりの硬度と靭性を兼ね備えている事から、以下の様なアート作品も産み出されてる。
photo by 月刊駄美術図鑑
蚊取り線香看板。
架空の店名は「NATSU NO OWARI」
です。
蚊と言うのは不思議な能力を持つ生き物で、戸締まりをしていても室内に入り込む。
それほどのスピードで飛んでいないにも関わらず。だ。
しかし、やはり隙を見て扉や窓から入る事が多いのだろう。
が、この「蚊取り線香看板」は店の軒先に取り付ける事により、出入り口からの蚊の侵入を許さない。
「NO mosquito.」
しかし、頑丈なコンクリートに取り付けられた鋼鉄の看板の様に「永遠」の物ではなく、
「蚊取り線香看板」には「時間」の概念が強く影響する。
深みのある味わい深い緑の「それ」は、やがて「灰」となりアスファルトの上に粉となって落ち、風に乗って消える。
時間がさらに影響を及ぼした時、
取り付ける為の鉄の部材と、蚊が嫌がるのであろう線香の香りだけを当たりに残し、「蚊取り線香看板」は姿を消す
蚊取り線香看板が燃え尽きたら、その日の営業は終了。なんてのもカッコいいかもしれない。
そう。夏の終わりは いつも儚い。
夏嫌いやけど。
なんだか切なくなって「蚊取り線香看板」が欲しくなった方はアドニックへご連絡下さい。
クリエイティブ部 小島 和人 ハモニズム
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