街を歩いていて、上部が斜めにカットされたビルを見かけませんか?
建築物を新たに建てる場合、建てられる建築物の最高の高さは建築基準法によって定められています。
高さ制限にはいくつかの種類があり、上部が斜めにカットされたビルの秘密はその中の「道路斜線制限」もしくは「隣地斜線制限」の影響によるものが多いです。
■区画全体で考えた開放感が基準
「道路斜線制限」や「隣地斜線制限」は道路や隣の敷地の上部の見通しや開放感、周囲の日照(太陽の光が当たる率)を維持する為の規制です。
用途地域と呼ばれる地域の基準や道路の幅などに影響される所が多いのですが図説するとだいたいこんな感じです。
高さ基準を上手い具合に交わして、目一杯建築物を設計して行くと必然的に建物の上部は三角形が生まれてきます。よく見る斜めの形状はこれですね。
前述した「用途地域」というのは「住居専用地域」「商業地域」「工場地域」等細かく分けられていて、それにより高さの制限や建てられる建築物の大きさにかなりの差が出ます。例外として、敷地内に一般公衆が出入り出来る公園や広場等の「公開空地」と呼ばれるスペースを作った場合は高さ制限や容積率(簡単に言うと床を作れる割合)の緩和が適用されます。
都市部における超高層マンションやビルの周りが広大な広場が多いのはこれによる影響が多いと思います。
と、日本ではざっくりとですが、この様な規制によって都市景観を整えているのですが、海外ではそれぞれに取り組みがあるようです。
■各国でそれぞれの都市計画
今回はイギリスの話。
ヨーロッパでは、大聖堂や古城等歴史的建造物がとても良い環境に残っていますよね。
イギリスのロンドンでは街のランドマークであるセントポール大聖堂と国会議事堂の2つを「Focal Views焦点」として設定し、ウェストミンスターピア等、計10カ所を「View Point(眺望点)」とし、このView PointからはFocal Viewsを直接見られる様に高さ規制を行っています。
セントポール大聖堂
つまり、
・セントポール大聖堂と10カ所のView Pointを結ぶ直線
・国会議事堂と2カ所(国会議事堂は2カ所のみ)のView Pointを結ぶ直線
この線上の建築物は全て強い高さ制限を設けた事によってロンドンが誇るランドマークをより象徴的なものにしています。
「Keys Views(重要な眺望)」と言うそうです。
これを私が住む大阪に置き換えてみると。あちこちの観光地から大阪城が見えるような感じでしょうか。
日本でもこういった、文化的、歴史的価値のある建築物に対してもっと都市環境的に配慮した規制等が進んで行けば。と思います。
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クリエイティブ部 小島和人ハモニズム